JICA草の根プロジェクト – 小学校訪問(2013年12月)

JICAと東工大が協働で実施している「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上 ―地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」の一環として、日本の教育現場でどのようにICTが用いられているかを都内の二ヶ所の小学校で調査をしました。東工大山口研究室より、小野寺純子(研究員)、Oyun Tsogtsaikhan(M2)、Li Shengru(M1)、井上毅郎(M1)が参加しました。
また、この度の学校は、2014年1月末に予定されているモンゴル小学校教員のスタディツアーでも訪問が予定されています。

一つ目の学校では、マサチューセッツ工科大学が開発した子ども向けプログラミング学習ソフトウェア「Scratch」を活用した理科の授業、二つ目の学校では、一年生の生徒がタブレットPCの扱い方を学ぶ授業を見学しました。


1. 大田区立清水窪小学校

目的: ICTを用いた総合的な学習の見学
日時: 2013年12月3日
授業:プログラミング教室「てんびん」をシミュレーションしよう!
学年:5年生
参加者: 小野寺純子(研究員), Oyun Tsogtsaikhan(M2), Li Shengru(M1), 井上毅郎(M1)

清水窪小学校は理科教育に注力している「太田サイエンススクール」の一つです。上野校長先生の説明によると、最新機器の導入や大学からの出張授業、科学館などへの見学に力を入れています。当日は、東工大のプログラミング教育研究開発グループの仲谷佳恵さん(博士課程)のプログラミング教室を見学しました。これは、総合的な学習の時間として実施されており、プログラミングと理科を横断する授業でした。

Greeting of President

45分×2コマの90分の授業を仲谷さんが行い、6人の補助スタッフが生徒をサポートしながらが進められました。この授業のトピックは二つあります。一つは理科の授業で習った「てんびん」の理解を深めること。もう一つは、プログラミングを学ぶことです。

Tips! 学校教育におけるプログラミング:情報化が進む現代社会において、情報教育はもはや大人のみを対象とするものではなくなりつつあります。プログラミングはIT人材育成に不可欠なことはもちろんなこと、プログラミングを通した論理的思考や洞察力の涵養など副次的効果が期待されています。(小学校におけるプログラミング教育の取り組み〜教科教育への活用と教育実践の開発をねらいとして〜 齊藤貴浩他 より )。

ノートパソコンにあらかじめインストールされたScratchを使用して、児童は、Scratch上で動作するてんびんプログラムで遊び、おもりをさまざまに付け替える過程で、天秤が水平になる原理を学んでいました。事前に理科で学習した内容と相まって、その理解はより深まったようです。

また、てんびんプログラムを動かしているコードの説明もありました。1ステップごとにどのような操作(プログラム)が行われているかを学ぶとともに、物事を論理的に思考する練習にもなりました。授業はパソコン上で学習するのみならず、配布資料の問題を解いたりと、様々な要素を組み合わせて成り立っていました。

 

Student playing physics game running on Scratch

最後には、プログラムで使用したのと同じ、実物の天秤が一人一人にプレゼントされ、子どもたちは帰宅後もそれで遊んだり、勉強したりできるような環境が整えられていました。

Gift for the students

2. 港区青山小学校

目的: 総合的な学習の時間を利用したタブレットPCの導入授業の見学
日時: 2013年12月11日
授業:タブレットPCの使用法の説明
学年:1年生
参加者:黒川美穂子(研究員), 小野寺純子(研究員), Li Shengru(M1), 井上毅郎(M1)

青山小学校は、「学習基盤」、「人的基盤」、そして「地域基盤」という三つの基盤を子どもが養うことを教育の目標としています。また、ICTを使用した授業で、地域の中の特色のある学校を目指しています。今回の授業では、1年生がLenovo社より提供されたWindows 8のタブレットPCを用いて、最新の情報通信技術の扱い方を学びました。

また、教育系ウェブプラットフォーム「エデュペディア」からも三人の方が見学に訪れていました。 竹村副校長先生へのご挨拶の後、私たちは一年生の授業「タブレットPC」に案内してもらいました。児童は見慣れないタブレット型のPCにわくわくしている様子でした。


Classroom introduction

最初に、ログインの仕方が児童に伝えられました。ロック画面にはコアラが登場し、両目を一つずつタッチしたあと、頭をスワイプしてなでるとロックが解除されました。この工夫が、児童の興味をより惹きつけていました。

Lockscreen

その後、画面右側に登場する「チャーム」(さまざまな操作を行うことができる棒状の領域)を表示させる方法や、カメラの起動、終了のさせかたをタブレットPCを触りながら直感的に教わりました。子どもたちは、様々な操作をすばやく習得し、楽しみながら学習をしていました。
基礎的な操作方法を学んだ後は、カメラの使い方を教わりました。視覚的に興味を惹きつけ易いカメラは生徒の関心をより高めていました。また、カメラは、理科の植物観察や体育の運動の動作などを写真や動画に収め、振り返り学習やグループワークに使うことができ、将来の広がりに繋げることができます。

Basic instruction
Taking photos

子どもたちが極めて自然に最新技術に慣れ親しんでいたのは驚くべきことでした。

青山小学校では、タブレットPCを様々な授業に応用利用し、授業を楽しく充実したものにする試みを続けています。
東工大研究チームは、教育現場での生の活動を見学し、多くの知見を得ることが出来ました。

2014年1月には、モンゴルの小学校教員が青山小学校を訪れ、授業見学することも予定されています。


 

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