研究室のメンバーが第63回国際比較教育学会(CIES)に参加

山口・高田研究室の山口教授、平井(D4)、Mai(M2)、モンゴル金融経済大学のSukhbaatar教授がサンフランシスコで4月13日から18日に開催された第63回国際比較教育学会(CIES)に参加した。CIESは比較教育分野で最も大きい学会の一つで、今年は120ヶ国以上から約4,000人が参加した。CIESの2019年のテーマは“Education for Sustainability”で、そのテーマの下1,400の発表が行なわれた。

山口教授、Sukhbaatar教授、Maiは“Educational technology and faculty development” のセッションに発表者として参加した。山口教授、Sukhbaatar教授はJICA草の根事業として2012年から2017年にかけて行なわれた「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上―地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」のインパクト調査の結果を報告した。インパクト調査は1,161名の小学校教員を対象に行なわれた。調査結果として、モンゴルの小学校におけるICTの活用について、県レベルと学校レベルの教員研修がそれぞれ52%と34.8%増加、学校での教員のパソコン利用時間が9.5%増加、教員の能力に対する認識と満足度がそれぞれ増加など多角的な観点での向上が確認されたことが説明された。

Maiは“Study on Self-Regulated Learning Processes for Professional Development using ICT: A Case of Primary School Teachers in Mongolia”と題した研究発表を行なった。発表では、2017年に実施された248名の小学校教員を対象にしたWebベース対話型教材の利用による自己調整学習に与える影響に関する質問票調査結果を説明した。2016年に実施された質問票調査の結果との比較、20名の小学校教員とのディスカッションを基にした分析結果も併せて説明した。

平井は博士研究の予備調査として行なった“teachers’ interpretation of innovative use of ICT in the context of lower secondary schools in Mongolia”に関する発表を行なった。研究の目的はモンゴルの中学校教員が考える革新的なICTの活用を特定することであった。平井は研究の中で行われた三つの調査の結果を説明した。一つ目はモンゴル全21県とウランバートル市8地区のメソドロジスト98名を対象にしたを質問票調査、二つ目は91名の中学校教員を対象にした質問票調査、三つは15名の中学校教員と行なったフォーカスグループディスカッションで、調査の結果から全国レベルで活用される教員ポータル(Bagshiin Khugjil)がモンゴルの中学校教員の間での革新的なICTの活用方法として特定されたことを説明した。質疑応答では、なぜ三つの調査を組み合わせて行なったのかということについて質問が挙がった。平井は一つ目の質問票調査がモンゴル全体の傾向として広く活用されるICTを選定するために全国のメソドロジストを対象に実施し、続く調査は、選ばれたICTの具体例と選ばれた理由について精査するため、中学校教員を対象に実施したと説明した。また、三つの調査の結果を総合的に分析することで教員の考える革新的なICTの活用方法の具体例が特定されたことを説明した。

研究室のメンバーはHerbst Theatreで行われたジェフェリー・サックス教授の基調講演にも参加した。Herbst Theatreは1945年に国連憲章の調印が行なわれた場所として知られている。サックス教授の基調講演の要点は三点あった。一点目は持続可能な開発目標は新しい考えではなく、70年前に締結された基本的人権が再定義されたものであることでった。特に、「すべての人が基礎教育を受けることができる」という基本的人権がいまだに達成されていない事が指摘された。二点目は途上国において質の高い教育を実現するためには、自助努力ではなく国際的な資金協力の枠組みが必要であるということであった。質の高い教育の実現に必要な投資額が途上国の税収と同程度であり、途上国だけでの達成は不可能だと説明された。三点目が、持続可能な教育開発の実現のためには富の再分配が必要であることであった。世界の富裕層2,200人の年収10兆ドルのうち0.004%を教育への投資に回す事で持続可能な教育開発を賄うことができることが説明された。誰も取り残さない教育開発を目指し、教育者が声を合わせて世界に訴えかけ、力を合わせていくことが重要であるとの力強いメッセージを伝えた。

研究室の学生のコメント

平井:学会への参加、研究の発表を通じて、研究に対するモチベーションがさらに高まった。また、他の研究者の発表や議論に参加し、現場での研究の様子や学術的な研究手法など多くの知識を得ることができた。サックス教授の基調講演では簡潔でありながら力強いメッセージを受けとても感動した。学会での発表とサックス教授の基調講演で得られた知識から教育分野における課題とこれからの展望について深く学ぶことができた。

Mai: 学会の参加を通じて、教育分野において、注目されているトピック、課題、課題解決の実践についてなどの多くの新しいアイデアを得ることができた。特に教育発展のための革新的な資金調達と投資の仕組みの整備の重要度が増していることや、ICTを活用した教育の向上に対して注目が集まっていた。さらに共通の分野の研究者とのつながりを持つこともでき、これからの研究を進める上でのたくさんの刺激を受けた。

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