山口教授、平井、石原の三名がJICAナレッジフォーラムへ参加

6月11日JICA研究所においてナレッジフォーラム「人的資源開発の未来に向けた課題~デジタル化、AI、途上国雇用の未来~」が開催された。山口教授がパネリストとして登壇し、平井(D4)、石原(M2)が聴講した。JICAナレッジフォーラムは国際開発に関心を持つ多様な関係者が知見を共有・相互学習し新たなアイディアを生み出していく機会としてJICA研究所が立ち上げたもので、今回が第三回目の開催となる。

フォーラムでは駒澤大学の井上智洋准教授による講演が行われた。井上教授はAI技術の研究経験・IT業界での業務経緯を持ちながら現在は経済学者として活躍されており、AI発展とそれが社会に与える影響を論じた著書の執筆もされている。講演の内容は主に以下の3点であった。

一点目:AIによる不均一なエンパワメント

AIの技術の発展はすべての人々の生活に大きな変化をもたらす。しかし、その効用は一様ではなく、その恩恵を受けれる人とそうでない人の差が生まれる。現段階において、世界で最もAIの恩恵を受けている人の例として、中国の習近平国家主席を挙げ、中国で導入が始まっているAI監視カメラ「天網」により、少数の人間が多くの人間の行動パターンを把握することが実際に可能になっている。

二点目:AIがもたらす雇用への影響

AI技術の普及によって労働力の二極化が起こると言われている。すでに日本と米国において、IT技術の普及によって事務作業などの中スキル雇用者数の減少が始まっている。一方で肉体労働などの低スキルと専門技術職などの高スキルの需要増加が起きている。この二極化傾向はAI技術の普及によってますます加速し、それに伴い人々の格差が拡大する

三点目:第四次産業革命

井上教授によると、GoogleやAmazonなど巨大IT企業を擁する米国、または国家主導でAIの技術開発を行っている中国のどちらかにより第四次産業革命が起きる可能性がある。またAIの開発・自動化の促進により、製造業の先進国回帰が起こることも予想される。開発途上国については、農業から工業、工業からサービス業といった段階的な産業発展ではなく、急速にIT化が進んだルワンダのようにステップを飛ばしてAIを中心とする情報化社会へと発展することが考えられる。があることを語った。一方でAIの進化・自動化に伴い、安価な労働力によって経済を支えている国には困難な道が待ち構えていることも言及された。

この話をうけて、パネリストの山口教授は将来のAIに関するルール策定に関する国際協調の必要性、AIに起因する格差への対応、AI時代に教育をどのように雇用につなげていくかの三点について述べた。またJICA研究所の神氏は開発途上国におけるAIの導入の可能性を自身のエチオピアでの経験を踏まえ、インフラの整備と人材育成が急務であることは間違いないと述べた。 今回の講演を通して、AIによって私たちの社会が具体的にどのように変化するのかという問いについて経済学の視点からの考えを学んだ。私たちの研究室ではAIに関するユネスコの資料等をセミナーで扱っているが、「格差の拡大」は大きな課題として述べられている。今回はその「格差の拡大」の対応策について、国際的なルール策定の重要性、ベーシックインカムなどの制度の整備の必要性など有識者の考えを学ぶ非常に貴重な機会となった。AIの影響は私たちの携わる国際開発という文脈にも関わっており、今後各国のAI開発及び導入の動向を知ることに加え、私たちが関わる国がどのように変化し、AIの影響を受けていくのかを考える必要性を強く感じた。

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