山口・高田研究室のメンバーは第十五回ASEFClassNetへ参加した。
11月29日、山口教授と山口・高田研究室のメンバー、平井(博士3年)と石原(修士2年)は国際会議第15回ASEFClassNetへ参加した。ASEFClassNetは11月25日から29日の期間東京で開催され、「持続可能な開発のための教育(ESD)」及び「AI:教師の役割と準備」というテーマに焦点を当てたもので以下3点の質問が事前にあげられていた。
1.AI時代においてESDにむけてどのような教育と実践の変化のため教師は何を行う必要があるのか?
2.適切な教育学を発展させるために教師はESD及びAIに関してどのレベルの知識が必要かどうか?
3.ESDを学校のカリキュラムに有意義に統合し、来るAI時代への準備を強化するためには、教師のどのような能力開発と協力支援が必要か?
山口・高田研究室の生徒は午前中上智大学にて開催された「学校カリキュラム及び教師のAI準備関する本会議」に参加した。本会議は「ESDと主流の学校カリキュラムへの統合に関するアジア・ヨーロッパ本会議」及び「AI時代の教師の役割と準備に関する本会議」の2つのセッションで構成されていた。
最初の本会議のパネルトークでは5人のパネリストが「ESDと主流の学校カリキュラムへの統合」という議題についてアイディアを共有した。パネルトークは英国オープン大学教育工学研究所助教授のWayne Holmes教授が進行役を務めた。
文部科学省の小松太郎教授は1つ目の質問(「AI時代においてESDにむけてどのような教育と実践の変化のため教師は何を行う必要があるのか?」)に回答した。
AI時代の教師の役割の変化に対応するためには「私たちは何を教えるのか」という点が重要である。なぜならESDスキルのフレームワークでは創造性や批判的思考など多数のスキルに分かれているがそれらはグローバル市民や21世紀型スキルとよく似ているからだ。ESDが他のアプローチと異なるのは「これは持続可能かどうか?」を問うだけではなく「どのような社会を我々は維持したいのか?」という事を問い続けているという点だ。ESDには長期的なビジョンがありその点で、現代の問題により重点を置いたグローバル市民権とは異なるものである。
フィンランドの高校の校長であるMagnus Westerland氏はフィンランドESDにおける「エンゲージメント」「コラボレーション」「バランス」の3つの要点にについて強調した。
ニュージーランドの学習プロジェクトリーダーであり中学校の物理教師でもあるCairan Finnerty氏はニュージーランドの国家標準教育評価(NESA)とESD教育を紹介した。ESDはニュージーランドではプロジェクトベースの学習を利用する科目である。本科目では学生は自分自身で問題を見出し教師は生徒と協力して解決策を見出す。このアプローチの重要性を強調するために杉村教授はESDの内容に焦点を当てた上智大学の新しい英語コースの導入に伴う学際的アプローチの重要性について言及した。
後半のパネルトークでは「AI時代の教師の役割と準備に関する本会議」について山口教授を含む5名が意見を共有した。
エストニア教育省のeサービス部の副部長であるKristel Rillo氏はAIの教育と教育のためのAIの両面について述べた。AIの教育に関して、「AIによって実際に構築できるもの」と「AIでイノベーションを実際に促進する方法」という2つの質問を通してAIの役割を理解する必要する必要がある。教育のためのAIについては、「AIの目的」、「使用するデータの種類」、そして「解決したい問題」などAI関連の質問を明確にする必要がある。現在エストニアではAIを導入した際の教師の仕事の再デザインが進行中であるとのことであった。
山口教授は始めに現在のAI開発に関する情報を「強いAI」や「弱いAI」の例を交えながら共有した。その後AIによってもたらされる機会と課題について紹介をした。
現在のAIは「弱いAI」とみなされ、限定された状況下における特定のタスクを通して私たちを支援する。しかし「強いAI」は認識能力を必要とする作業を行うことができるものと定義され「汎用人工知能」とも言い換えられる。
「弱い」とはみなされているものの、現在の人工知能は行動分析、ロボット工学、コミュニケーションロボットなど様々な可能性を我々の生活に提供している。
AIの課題については倫理問題と平等性の問題について紹介した。現在AIの開発では独占的なテックジャイアントの倫理が反映される傾向がある。倫理問題を考える際に「誰の倫理を適用するのか?」という点は大きなチャレンジである。
AIと教育の統合には大きな可能性があるものの、教師は生徒たちがAI導入により変化していく環境に対応できるように教育する必要がある。
一連のパネルトークを通して研究室の学生は、現在急速に変化する社会における“Transdisciplinarity“の重要性を学んだ。私たちが所属する系である融合理工学系(“Transdisciplinary Science and Technology”)の学生として異なる二つ以上の研究分野を橋渡しできる者になることができることが期待されている。そのために私たちはこの急速に変化する社会の最新の知識を学び続けなければならないことを再確認した。

