「21世紀型スキル」に係る研究事業

平成25年度より東京工業大学は、ユネスコアジア太平洋教育地域事務所(タイ国バンコク、以下ユネスコバンコク事務所)と協同で、アジア・太平洋地域における「21世紀型スキル」に関する研究事業を行っている(文部科学省政府開発援助ユネスコ補助金)。平成25年度は、アジア・太平洋地域から10ヶ国・地域が参加し、教育政策における「21世紀型スキル」に関する比較分析を実施した。平成26年度は「21世紀型スキル」育成に係る教育現場での実践に焦点を当てた現状調査を日本を含むアジア・太平洋10ヶ国(予定)で実施の計画である。

背景

知識基盤社会に対応できる人材の育成に向け、学力のみではなく創造性、コミュニケーション能力、問題解決能力などを含めた包括的な能力の育成が重要であるという議論が近年活発に行われている。そのような包括的能力は「21世紀型スキル」、「非認知スキル」と呼ばれている。この潮流はアジア・太平洋地域でも見られ、21世紀型スキルを教育に取り入れようとする改革は同地域でも開始されている。例えば、オーストラリアでは2010年末から施行されているナショナルカリキュラムの中で「汎用的能力」(general capabilities)が定義された。この能力は読み書き計数に加え、ICTスキル、批判的・創造的思考、倫理的行動、異文化理解、個人的・社会能力などを含んでいる。また、タイでは教育課程の中で「生活技能」(life skills)教育を行っており、基礎学力の充実に加え、意思決定、問題解決、創造的思考、批判的思考、コミュニケーション、人間関係、自己意識、共感性などの育成を目指している。しかし、各国の具体的な取り組みやその有効性・留意点などは体系的に情報収集・分析・共有がされておらず、ユネスコアジア太平洋教育地域事務所(タイ国バンコク、以下ユネスコバンコク事務所)が主催する専門家会議においてもアジア各国の教育政策担当官や教育政策研究者から更なる情報共有そして効果的な情報交換の場の必要性が繰り返し指摘されている。

以上を背景に、平成25年度政府開発援助ユネスコ活動補助金により、東京工業大学はユネスコバンコク事務所と協同で「アジア6カ国の教育政策における『21世紀型スキル』の比較分析と参加型教育政策データベースの構築」事業(第1フェーズ)を実施した。また、平成26年度も同補助金の助成をうけ、「アジア6カ国の教育政策における『21世紀型スキル』の育成に係る教育現場の実践分析と参加型教育政策データベースの活用促進」事業(フェーズ2)を実施している。

事業の全体像

「アジア6カ国*の教育政策における『21世紀型スキル』の比較分析と参加型教育政策データベースの構築」事業 (第1フェーズ:2013年4月~2014年3月)

図:平成25年度事業の概要

*当初は6カ国(日本、韓国、中国、モンゴル、マレーシア、タイ)で実施予定であったが、更に4カ国・地域(オーストラリア、インド、フィリピン、香港)から参加申し出があり、最終的には10カ国・地域の比較分析となった。

「アジア・太平洋地域6カ国の教育現場における『21世紀型スキル』育成のための教育活動の現状分析及び参加型教育政策データベースの構築」事業 (第2フェーズ:2014年3月~2015年2月)

図:平成26年度事業の概要

平成26年度事業の活動は以下の4点である。

  1. アジア・太平洋各国における教育現場での実施現状調査・分析
    「21世紀型スキル」の育成がアジア・太平洋各国・地域の教育現場でどのように実施されているかを調査・分析する。本活動は、①小・中学校を対象とした学校調査、② ①及び前年度事業の政策に係る比較分析結果をふまえ、政策から実践までを包括的に評価する枠組みの検討、の2点から構成される。
  2. 国別調査のための調査ツールの検討
    活動1の実施現状調査に先立ち、各国・地域での調査の枠組み・ツールや、スケジュール等を検討・合意する。
  3. 参加型教育政策データベースの活用促進
    前年度事業の経緯を踏まえ、参加型教育政策データベースを構築し、更にその具体的な活用を促進する。また、同データベースの安定した保守・運用体制の構築サポートも実施する。
  4. 東工大・ユネスコ共催地域シンポジウム開催
    上記活動の成果を広く情報発信するため、東工大とユネスコバンコク事務所は「教育現場における『21世紀型スキル』育成に関わる国際比較」をテーマとして、アジア・太平洋地域シンポジウムを共催する(2014年11月開催予定)
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