平成29年度 政府開発援助ユネスコ活動費補助金事業

概要

2017年6月から2018年3月にかけて、山口高田研究室は、ユネスコ、モンゴル教育文化スポーツ省、モンゴル国立教育大学との連携のもと、政府開発援助ユネスコ活動費補助金事業「基礎教育における情報技術を活用した教育研修の展開と対話型自己学習教材の開発」を実施した。本事業は,ICTを活用した教員研修教材を開発し,研修において新教材の試行・評価を実施し,モンゴルにおける中学校教員のスキルの向上を目的とした。

プロジェクト実施組織

本プロジェクトのSteering committeeは東京工業大学、モンゴル国立教育大学、モンゴル金融経済大学、モンゴル教育省のメンバーで構成される。また、13名のモンゴル教育大学教授・職員から成る4教科専門チームが組織され(数学、化学、歴史と社会、技術とデザイン)、プロジェクト実行ユニットと共に教員研修の実施と研修教材開発に従事した。

活動

プロジェクトでは主に以下の4つの活動が行われた。

  • 教員研修用のビデオCD(VCD/DVD)教材の開発
  • 対話型Webベース教員研修用教材の開発
  • 新教材の試行・評価実施(カスケードモデルによる教員研修)
  • ユネスコ・東工大・モンゴル教育文化科学省共催地域シンポジウム開催

プロジェクト成果

本事業の活動は計画通りに実施され、以下の成果をあげた。

  • 教員研修用のビデオCD(VCD/DVD)教材の開発:

モンゴル国立教育大学(以下,教育大学)を中心に形成された16名の教材開発チームにより,中学校教員研修に必要な4教科(数学,化学,歴史と社会科学,技術とデザイン)の教員研修用VCD/DVD教材及び研修ガイドラインが作成された。各教材のドラフト版は,教員研修専門家と教員を対象とした研修で試行・評価された。具体的には,研修参加者対象にアンケート調査,聞き取り調査を実施し,その結果に基づき教材を改良した。2018年1月に4教科の教員研修用教材セットが完成し,モンゴル全中学校(768校)に配布された。

  • 対話型Webベース教員研修用教材の開発:

本事業により教員が研修における対話型Webベース教材として,教員が研修教材の内容の理解度を自己分析できるテスト形式の自己学習Web教材を開発した。これは新しいタイプの教員研修教材であるため,利用者からのフィードバックに基づく開発を重要視した。具体的には,以下の4段階で開発が実施された。

  1. 本事業で開発された4教科の研修ガイドラインの内容に基づき,教材開発専門家チームが各教科25問の質問を作成。
  2. 現地における持続可能な情報技術を分析し,オープンソースソフトウェアを活用し,オフラインでも使用可能な対話型自己学習用教材を開発。
  3. 地方2県とウランバートル市における教員研修にて,新しく開発された本教材に関するフィードバック調査を実施。
  4. 試行に参加した教員からの様々な意見を反映し,最終版を完成。

4教科の自己学習Web教材は,VCD及びガイドラインと共に,21県とウランバートル市の教育文化局に配布された。

  • 新教材の試行・評価実施:

教員研修専門家と教員の研修において,開発した新教材の試行・評価を実施した。研修は,ウランバートル市,バヤンホンゴル県(ゴビ南部),ホブド県(西部)の3地域で開催された。教材開発に携わった教育大学の専門家,東工大チームと現地政府の教育文化局の代表が各地域で研修を実施し,ウランバートル市32名,バヤンホンゴル県33名,ホブド県36名の計101名の研修専門家と中学校教員が研修に参加した。各研修では,教材ごとにグループで分析が行われ,アンケート調査と共に,参加者からのフィードバックをまとめた。それらのフィードバックに基づき,二度に渡りVCD/DVD教材とガイドラインの改良を実施した。

バヤンホンゴルで行われたトレーニングの成果の詳細は以下のリンクからご覧いただけます。(内容は英語で書かれています。)

  • ユネスコ・東工大・モンゴル教育文化科学省共催地域シンポジウム開催:

モンゴル政府,ユネスコバンコク事務所,東京工業大学学術国際情報センター共催のシンポジウム「ICT in Education in Mongolia」が2018年1月25日モンゴル教育省にて開催された。シンポジウムには,ユネスコバンコク事務所の教育と情報技術の専門家,モンゴル教育大学を始め現地高等教育機関の専門家,21県とウランバートル市教育文化局代表者ら73名が参加した。モンゴル教育省からは,モンゴル教育大臣上級アドバイザーGanbat氏らが出席し,モンゴル地方21県全県を含めた本事業の重要性,教員中心の本取り組みの意義が述べられた。シンポジウムでは,ユネスコバンコク事務所の教育専門家Park氏がアジア太平洋地域の教育と情報技術の傾向・発展と課題について持続可能な発展(Sustainable Development Goals)の枠組みと関連づけた講演を行なった。続いてモンゴル教育大のTs. Chimedlkham氏 D. Tsedevsuren教授が国内レベルでのICTの利用に関する発表を行い、国内の教育活動におけるICTの政策、設備、教員研修を含めた活用状況を紹介した。B.Jambaldori氏はバヤンホンゴル県のECDを代表して地方レベルでのICTの教育活動への利用状況に関して具体的な事例を含んだ情報共有を行なった。東工大からは山口教授がモンゴル金融経済教育大学のSukhbaatar教授と共同で2012年から2017年にかけて小学校を対象に行なわれたJICA草の根技術協力プロジェクト「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上ー地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」の成果を発表した。シンポジウムを通して参加者の間で具体的なICT活用の事例の情報交換が行われるなど活発な議論が交わされた。

シンポジウムの様子は2019年1月25日、26日の二日間にわたり全国新聞に大きく取り上げられた。

シンポジウムのスケジュールは以下のリンクから。(内容は英語)

シンポジウムで使われた発表資料は以下のリンクから。(内容は英語)

  • Test prototype of teacher training material with lower secondary school teachers

本事業の成果物

    • 4教科(数学,化学,歴史と社会科学,技術とデザイン)の教員研修用教材のVCD(1,000セット)
    • 4教科(数学,化学,歴史と社会科学,技術とデザイン)のガイドライン(1,300部)
    • 4教科(数学,化学,歴史と社会科学,技術とデザイン)の教員用対話型Webベース自己学習教材セット(CD版)(100枚)

 

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