概要
2012年3月から2017 年3月にかけて、山口高田研究室は、モンゴル教育文化科学省、モンゴル国立教育大学との連携のもと、JICA草の根技術協力プロジェクト「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上ー地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」を実施した。プロジェクトはモンゴルの小学校教員が現場のニーズに合ったデジタル教員研修教材コンテンツを開発し、教員研修を通じ、現地の教員が効果的に育成されることを目的に行なわれた。
教員研修は、モンゴルの基礎教育分野が発展していくために教育現場の教員が必要としているニーズ分析に基づき、教育現場の教員、学校長、地方政府の教員研修専門家、中央レベルの教員専門家の密な連携のもと実施された。教員中心の独創的な発想により地域性を活かした教材が8教科30コンテンツ開発された。研修にはカスケードモデルが導入され、広大な地域に学校が点在するモンゴルにおいて、21県及びウランバートルの全ての小学校教員を対象とすることが可能となった。
5年間の事業内容詳細
事業の成果とプロジェクト目標の達成度
1.事業の成果
本事業の活動は主に6つの項目を中心に実施された。
- デジタル研修教材開発サポートのための体制強化
- 現地のニーズに適合したデジタル研修教材制作教員 (メンター教員) の養成
- 現地のニーズに適合した教員研修教材の制作
- 地方小学校教員研修
- パイロット校にて生徒中心の教育実践のためのクラスルーム教材の開発
- その他の会合、評価、ワークショップ
上記の活動から期待された成果5項目とプロジェクト目標の達成度は以下の通り。
成果 1: 高品質の教員用デジタル研修教材制作をサポートするための教員養成機関 (モンゴル国立教育大学) の体制が強化される
モンゴル国立教育大学に専門家チームが形成され、パートナー県・地区の研修教材作成チームを継続的な支援を行なった。モンゴル国立教育大学の教育専門家チームは、8教科30コンテンツの教員研修教材の監修を行ない、最終版の制作に大きく貢献した。
成果 2: モンゴル21県の小学校教員研修担当者 (メソドロジスト) 及び、各県代表の研修担当教員 (メンター教員) がデジタル教材開発の知識・技術を身につける
モンゴル全国の各県・地区の代表者94名を対象にデジタル教材開発の知識、技術を高めるための研修をモンゴル国立教育大学にて実施した。その後、本研修に参加した代表者は、カスケードモデルを用いた研修を計画し、各県・地区にてクラスター校レベルの研修 (平均5校の代表者が参加) を実施した。その結果モンゴルの全小学校教員の約17%にあたる1683名の教員が研修に参加した。
成果3: 地方小学校教員が現地ニーズを反映したローカルコンテンツを含む教員研修教材を開発し活用できる
各パートナー県・地区代表の研修教材作成チームは、モンゴル国立教育大学の専門家チームの支援のもと、それぞれの地域の現状に適したコンテンツを含む教員研修教材を開発した。このプロセスでは品質を保証するための試行と改良が少なくとも4-5回に渡り行なわれた。この結果、モンゴル国立教育大学の専門家チームの監修のもと、8教科30コンテンツの教員研修ビデオが完成し、ガイドラインと共に全国の小学校に配布された。
成果 4: 地方小学校教員が現地の研修教材を活用し、生徒中心の教授法を積極的に取り入れ、生徒を教授できる
成果4については、以下の5点において成果が確認された。
- 教員の研修参加: 4県1都市で340名の教員及びメンター教員が研修を受けた。
- 県レベルト研修の機会の増加:パートナー地域である4県1都市おける研修の機会は、県レベルで平均8%増加した。
- 学校レベル研修の機会の増加:パートナー地域である4県1都市おける研修の機会は、学校レベルで平均52%増加した。
- 教員の評価の向上:優秀教員資格取得者の割合が4%(2007-2011)から57.62%(2012-2016)に増加した。
- 教員の意識・態度の向上:事業を通して教員自身の能力に対する評価が17%増加した。
成果 5:パイロット校にて、生徒中心の教授法を取り入れたクラスルーム教材が開発され、近隣の学校へ広く普及されることで、地方小学校教員の教授の質が向上する
成果5については、達成状況を確認するための6項目について成果が確認された。
- 近隣の学校へ広く普及されることで、地方小学校教員の教授の質が向上する成果5については、以下6項目について成果が確認された。
- コアチームの強化:コアチームは各パートナー県・地区のパイロット校にて36名で構成された。
- 機材の提供:現地パートナーにより各パイロット校にプロジェクターとスクリーンが提供された。
- 授業用教材の開発と普及:各パイロット校で授業用教材及び、マニュアルが作成され、近隣の学校に普及された。
- 生徒中心の教授法の実践:教員の80%以上がが現地のニーズに適合した授業用教材を利用し、生徒中心の教授法を取り入れた授業を実施していることが確認された。
- 教員の意識の向上:パイロット校の管理職への聞き取り調査により、教員が以前よりも意欲と自信を持って教育活動に取り組み、地域の教員研修においてリーダー的な役割を担っていると実感していることが明らかになった。
- 教員の評価の向上:各パイロット校での過去10年の優秀教員資格取得者の割合が2%(2007―2011)から77.5%(2012-2016)に増加した。
プロジェクト目標の達成度
プロジェクト目標: 現地のニーズに合ったデジタル教員研修教材を効果的に活用することで、地方小学校教員の授業における指導力と教授能力を向上させることができる。
ではこのプロジェクト目標について、二つの指標を掲げた。1) 指導力、教授能力が向上した教員の指導を受ける地方小学校の生徒が全体の18%を占める、2) 小学校教員の指導力・教授能力が向上したことを学校長、メソドロジスト、保護者が認識する。
各指標について詳細な分析をもとに評価をプロジェクト目標の達成度の評価を行った。
詳細は以下の通り
プロジェクトの活動成果詳細
各年の活動成果に関するスライド一覧(資料は英語)
プロジェクトの成果についての報告書
ミッションギャラリー
これまでのミッションに関する写真一覧
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- プロジェクト最終会議 (January 2017)
- バヤンホンゴルモニタリングミッション (September 2016)
- ホブドモニタリングミッション (September 2016)
- UBモニタリングミッション (September 2015)
- ヒンティモニタリングミッション (September 2015)
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