平成27年度事業(フェーズ3)

  • 「アジア・太平洋地域10カ国の教育現場における『21世紀型スキル』育成のための教員の指導力を高める取り組みの比較分析」事業 (第3フェーズ:20154月~20162月)

平成27年度事業の概要

図:平成27年度事業の概要

平成27年度事業の活動は以下の4点である。

  • アジア・太平洋地域10カ国における「21世紀型スキル」育成のための教員の指導力を高める取り組みの現状調査・分析

「21世紀型スキル」育成のための教員の指導力を高める取り組みについて10カ国にて国別調査を行なう。本活動は①各国の教育政策分析、及び小・中学校を対象とした学校調査、② ①及び地域シンポジウム(活動4)での議論を反映したアジア・太平洋地域10カ国の比較分析の2点からなる。

 

  • 国別調査のための調査ツールの策定・共有のための専門家会合

活動1の実施現状調査に先立ち、各国・地域での調査の枠組み・ツールや、スケジュール等を検討・合意する。

  • 参加型教育政策データベース運用に関する現地研修

前年度事業で構築した参加型教育政策データベースのユネスコバンコク事務所への移管、及び更なる活用推進を目指し、①現地での研修(マニュアル作成含む)、②同データベースの活用促進、③利用モニタリングの3つの活動を実施する。

 

  • 東工大・ユネスコ共催地域シンポジウム開催

上記活動の成果を広く情報発信するため、東工大とユネスコバンコク事務所は「『21世紀型スキル』育成に向けた教員の指導力向上に関わる国際比較」をテーマとして、アジア・太平洋地域シンポジウムを共催する(2015年11月開催予定)

 

以降、Phase III 終了時に更新

 

「アジア・太平洋地域10カ国の教育現場における『21世紀型スキル』育成のための教員の指導力を高める取り組みの比較分析」事業

20154月~20162月)

【各活動の概要および成果】

1   アジア・太平洋地域6カ国の教育現場における「21世紀型スキル」育成のための教育活動の実施現状分析

2015年4月から2016年2月にわたり、アジア・太平洋地域11ヶ国・地域において「21世紀型スキル」育成のための教員研修の現状調査・分析が実施された。平成27年度事業申請時は平成26年度事業時の10ヶ国(オーストラリア、インド、中国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、韓国、タイ、ベトナム)で地域研究を実施予定であったが、香港(中国)から参加要請があり、最終的に11ヶ国・地域での調査を実施した。

 

本研究は二つの活動で構成された。第一に、ユネスコバンコク事務所及びアジア・太平洋11ヶ国・地域の教育専門家との協働のもと、「『21世紀型スキル』育成のための教員研修についての政策及び実施状況分析」というテーマについて参加国・地域で調査し、国別調査報告書を作成した。第二に、後述の地域シンポジウムでの議論を反映し、国別調査報告書の結果をアジア・太平洋地域11ヶ国・地域のレポートとしてまとめた。

研究参加国11ヶ国・地域

図:研究参加国11ヶ国・地域

 

  • 国別レポート

各国の国別レポートは、1)教員研修に関する政策、2) 地方自治体や学校レベルでの研修、3)教員の意識、4)教訓や成功事例を含む多様な観点から分析された。後述の専門家会合で策定された研究フレームワークに基づき、各国の調査では、学校経営計画などを含む文献調査、学校長や教員を対象としたアンケート調査、聞き取り調査、教員研修の観察などが行われた。各国・地域での調査分析は2015年5月~11月に実施され、2016年2月に東京工業大学で実施された地域シンポジウムにて専門家間で共有・検討した後、2016年2月末に最終レポートとして提出された。

  • 国別レポート (under construction)

 

  • 地域レポート

上述の国別レポートの結果を比較分析し、その結果をアジア・太平洋10カ国・地域の地域レポートとしてまとめた。地域レポートでは研究参加10ヶ国・地域において、21世紀型スキル育成を促進する教育政策やカリキュラムが、学校経営方針や教育目標、カリキュラム等にどのように反映されているか、「21世紀型スキル」育成のための教授法や評価などといった観点から、各国レポートの結果を分析した。研究の主な成果として各国の教育政策育成における「21世紀型スキル」促進の方針は、調査に参加した各学校の教育経営計画や教育目標に反映されており、「21世紀型スキル」育成の重要性は、学校長や教員にも認識されていることが確認された。また、教育現場(学校レベル)においては、「21世紀型スキル」育成について教員の役割が変容してきていることが示唆された。コミュニケーション能力、批判的思考能力などで構成される「21世紀型スキル」はその教授の際、多分に学習者の実践を通じた学びを必要とするため、教員が一方向から知識を教えるのではなく、「ファシリテーター」として生徒の経験、自発的な学びを促進する必要があると多くの教員が認識していることが分析の結果得られた。一方で、そのような役割の変化、教育アプローチの変化に対して、教員への支援(訓練機会、指導用教材等の教員支援、教授法の情報共有等)が必ずしも充分ではなく、「21世紀型スキル」育成に不安を感じている教員も多いことが示された。

 

  • 地域レポート(under construction

 

2     2)    国別調査のための調査ツールの検討

 

国別調査の事前準備として2015年4月20日から2日間にわたり、調査ツール検討のための専門家会合がタイ、バンコクで実施された。専門家会合にはアジア10カ国・地域(インド、中国、香港(中国)、マレーシア、モンゴル、日本、フィリピン、韓国、タイ、ベトナム)の政府関係者・教育専門家、およびユネスコバンコク事務所の代表者計19名が出席した。本会合では「「21世紀型スキル」育成のための教員の指導力を高める取り組みの現状調査・分析」への準備として次の3点を実施した。

1)前年度の研究結果の共有及び本事業の国別調査の位置づけ確認

2)教育現場に焦点をあてた分析ツールの共有

3)調査実施スケジュールの決定

関連記事:

  • 専門家会合の開催記事(英語、ユネスコバンコク事務所発行)

 

3   参加型教育政策データベース運用に関する現地研修

 

平成25年度から2年間にわたり、ユネスコバンコク事務所と協働し、同事務所の複数の情報ポータルを統合して参加型教育政策データベース を構築した。本データべースは、同事務所で維持管理されていたeMap (教育専門家ネットワーク)、Education System Profile(各国の教育制度についてのデータベース)、eForum (オンラインディスカッション機能)、eResources(教育政策情報ポータル)に新機能であるeConf (オンライン会議/イベント管理機能)とeJob(オンライン求人登録/応募機能)を統合し、計6つの機能を持つデータベースとして構築された。平成26年度1月より、本格的に利用を開始し、ユネスコバンコク事務所担当者による保守運営が行われている。

 

表 4 参加型教育政策データベースの機能一覧

  機能名称 機能説明
既存機能
H25-H26 統合・開発)
eMap 教育専門家の登録、検索機能
eForum メンバー間でのオンラインディスカッション機能
eResources メンバー間での情報共有、検索機能
Education System Profile アジア・太平洋地域各国の教育情報のデータベース
新規機能
H26開発)
eConf 教育に関するイベントや会議の管理機能

(オンライン参加登録や、参加者情報の一括管理含む)

eJob 教育に関連する求人情報の管理機能

(メンバーによる求人情報の掲載や、応募機能を含む)

平成27年度事業では、この参加型教育政策データベースのユネスコバンコク事務所への移管、及び更なる活用推進サポートを目指し、現地での研修(ユーザー別のマニュアル作成含む)や 同データベースの活用促進などの活動を実施した。

 

現地研修では、ユーザー種別に必要となる操作や情報を整理した3種類の操作マニュアル(システム管理者用、コンテンツ管理者用、その他職員用)を作成した。なお、平成26年度事業時の聞き取り調査で、データベースの操作に不慣れなユーザーがいることが明らかとなった。これを踏まえ、更なるユーザー支援策として参加型教育政策データベースの機能別に基本操作をまとめたチュートリアル動画も作成した。操作マニュアル及びチュートリアル動画は参加型教育政策データベースのHELPページに登録されている。

 

活用促進活動として、ユネスコバンコク事務所主管の会議やイベントでの活用や周知のためのリーフレットの作成を実施した。2016年2月末時点で、6つのユネスコバンコク事務所主催の会議やイベントで参加型教育政策データベースが活用されている。活用事例としては、会議前後の参加者間のコミュニケーションがある。ユネスコバンコク事務所主催の会議で、教育専門家がeForum (ディスカッション機能)を活用してグループページを作成し、会議前に自己紹介や会議で打ち合わせ予定の内容のブレインストーミングの場として活用した。グループページは、会議後もフォローアップや情報共有の場として引き続き活用されている。

『ACEのEForumの画面キャプチャ』

 

■参加型教育政策データベースリーフレット(英語)(Download)

■参加型教育政策データベース(英語、ユネスコバンコク事務所ウェブサイト内)

*登録には、履歴書(英文)をnespap(at)unesco。orgまで送付する必要があります。

 

4    東工大・ユネスコ共催地域シンポジウム開催

アジア・太平洋地域11カ国・地域の21世紀型スキルに係る国別調査の共有・検討の場として、2016年2月22日~24日の3日間、地域シンポジウムをユネスコバンコク事務所と共催した。本年度の地域シンポジウムは、東京工業大学大岡山キャンパスにて開催された。

 

本シンポジウムには、アジア・太平洋地域15ヶ国・地域(オーストラリア、香港、中国、日本、モンゴル、インド、ネパール、インドネシア、マレーシア、モンゴル、フィリピン、韓国、スリランカ、タイ、ベトナム)の政府関係者・教育専門家、及びユネスコバンコク事務所の代表者計49名が出席した。

 

シンポジウムでは、研究参加11ヶ国・地域(日本、韓国、香港、マレーシア、モンゴル、オーストラリア、インド、フィリピン、中国、タイ、ベトナム)の教育専門家が、「21世紀型スキル」育成のための教員の指導力向上について、各国・地域での分析結果を発表した。日本の事例として、東京工業大学から山口しのぶ教授と山本祐規子研究員が、秋田県を中心とした調査結果を発表した。発表では、秋田県独自の工夫が加えられた研修体系や、秋田県の小中学校での研究授業観察からの考察結果、及び秋田県の学校長·教員187名から得られたアンケート結果などを報告した。各国からは、様々な教員研修の実施例が報告された。多くの国別調査で、「21世紀型スキル」指導に特化した研修を行なうのではなく、教員が身に着けるべき指導力の一部として通常の研修の中で、包括的な指導力の向上が図られていることが報告された。一方で、参加した教育専門家からは、学校の中には、予算不足、人手不足から、実際には教科知識の習熟に留まる研修もあるとし、「21世紀型スキル」のための指導力育成を充分に行うためには、学校への財政的・人的サポートを強化していく必要が述べられた。

地域シンポジウムでの集合写真(2016年2月22日~24日)

                  図:地域シンポジウムでの集合写真(2016年2月22日~24日)

関連記事:

  • ユネスコ(英語:ユネスコバンコク事務所発行)
  • 地域シンポジウム(英語:発表原稿やコンセプトノート等があります)
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