モンゴル

研究活動

Webベース対話型教員研修教材を活用した自己学習の効果 (2015-2018, Shengru Li )

1. 研究背景/目的

自己調整学習(SRL:Self-regulated learning)とは学習者が学習過程(思考、動機付け、行動)を能動的に進める学習を指す。Pintrich の考案したSRLモデルは子どもの学習、医療研修、教員研修など幅広い分野の研究において用いられている。学校現場では、教員が社会の変化に合わせて常に新たな知識とスキルを構築する必要があり、教員の自己学習が重要である。広い国土に学校が点在するモンゴルにおいては、学校内研修の役割は大きい。

学校内研修の継続的な実施には、教員の学習意欲と、学習した知識の実践に移す姿勢、さらに、教員の自己評価や、教員同士での議論や協働による自己学習が日常的に行なわれる環境が重要となる。こうした背景をふまえ、本研究はモンゴルの小学校教員の自己調整学習に着目し、自己調整学習理論を用いて、以下二点を研究の目的とした。第一は、教員の自己学習において重要となる自己調整学習プロセスを明らかにすること、第二は、対話型教材が教員の自己学習の効果に及ぼす影響を明らかにすることである。

2. 研究手法

2016年に教員の自己学習用教材として三教科におけるWebベース対話型教員研修教材(以下、対話型教材)をモンゴル国立教育大学専門家との協働のもと開発した。対話型教材はゴビ地域、バヤンホンゴル県の小学校教員によって6か月間使用された。その後、2016年9月に対話型教材を使用した教員と使用していない教員合わせて285名を対象に、自己調整学習プロセスと自己学習効果に関するアンケート調査を実施した。はじめに、自己調整学習プロセスに関する潜在変数を明らかにするための予備分析を行なった。分析から5項目の自己学習プロセスに関連した変数(1. 内発的動機、2. 外的評価に対する動機、3. 計画と調整の能力、4. 批判的思考と肯定的思考、5. 努力の調整能力)と1項目の自己学習成果に関連する変数(学習満足度と学習内容実践の意図)が得られた。データ分析は主に三点に着目して実施した。第一に、重回帰分析を用いた自己調整学習による学習プロセスへの影響の分析。第二に、t検定とU検定を用いた対話型教材活用の有無による自己学習プロセスの差異の分析。第三に 媒介分析を用いた対話型教材の活用による、自己調整学習による学習プロセスへの影響の変化の分析である。

3. 結果

本研究からは以下の結果が得られた。第一に、重回帰分析から5つの説明変数のうち内的動機、計画と調整の能力、批判的思考と肯定的思考が学習の満足度に影響を与えることが明らかになった。次に、t検定の結果から、対話型教材を使用した教員は、使用していない教員と比較して外的評価に対する動機と学習満足度が高いことが示された。最後に媒介分析の結果から、内発的動機と外的評価に対する動機が媒介することによって、対話型教材を使用することによる学習満足度への影響が大きくなることが分かった。これらの結果とともに、現地の小学校教員からの聞き取り調査を実施し、モンゴルの小学校の文脈における結果の妥当性を支持する具体的な事例を得た。研究結果はモンゴルの小学校教員のための自己学習用教材の発展に活用される。

関連資料

学校管理職のICTの教育利用に対する積極的な態度に影響を与える要因 (2015-2016、山本祐規子)

1. 研究背景/目的

近年の情報技術の発展により、情報へのアクセス・管理・共有のあり方が大きく変化した。これらの変化は教育現場でも見られ、教育の質の向上のための情報技術活用の重要性が高まっている。モンゴルにおいても同様に、2000年に採択されたICT-Vision 2010によってICT導入計画が示され、特に、教育分野へのICT導入は重点分野として明記された。教育現場へのICT導入を進める上での重要な要因の一つとして、学校管理職のICT導入に対する認識があげられる。本研究は学校管理職のICT導入に影響を与える要因を明らかにすることを目的として実施した。具体的には、学校管理職のICT活用に対する認識について、三つの観点(教員研修、授業活動、授業の質)に着目し、ICTの実践に対する四つの影響要因(教員の属性、教員研修、学校環境、リーダーシップ)について調査した。

2. 研究手法

研究に用いたデータは、2012年から2017年にかけて実施された教員研修プロジェクト「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上‐地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」のベースライン調査から得た。各地域の多様性を考慮し、層別サンプリング法を用いて4つの州(Hovd、Bayankhongor、Selenge、Khentii)とウランバートルの2地区から合計222名の学校長、トレーニングマネージャーからの回答を得た。さらに、学校長、メソドロジストに対する聞き取り調査を実施し、定性的な分析を行なった。得られたデータに対してペアワイズ相関分析を行ない、学校管理職のICT活用の認識と上述の四つの影響要因について23項目の関係性を調べた。

3. 結果

本研究からは、以下の結果が得られた。第一に、学校管理職がICTの教育への有用性を認識することにより、学校環境の整備や教員への指導を通して、学校運営に影響を与えることがわかった。第二に、ICT導入のために、教員研修にあてる資金の調整が重要な要因となっていることがわかった。これらの結果から、ICTの導入を進めるためには、ICTの教育利用の有用性を示すこと、ICT導入のための資金調整を行なうことが肝要であることが示された。

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学校管理職のICTの教育利用に対する態度(2014-2016, 大矢雄介)

1.  研究背景/目的

既往の研究では、教育現場におけるICTの導入において、学校管理職の理解が不可欠な要素の一つとして考えられている。モンゴルの教育政策においても、学校管理職は学校レベルでのICT利用を進める上で、重要な役割と位置付けられている。このように学校管理職のICT利用に対する認識の重要性とその責任が増している。しかしながら、ICTの教育への導入に対して学校管理職の態度が与える影響に焦点を当てた研究は十分に行なわれていない。本研究は、モンゴルの小学校を対象に学校管理職の態度がICTの教育利用に与える影響を明らかにすることを目的として行なった。

2. 研究手法

研究に用いたデータは2012年から2017年にかけて実施された教員研修プロジェクト「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上‐地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」のベースライン調査から得た。モンゴルの5地域を対象地域とし、合計222名の学校長とトレーニングマネージャーからの回答を得た。得られたデータに対して記述分析、探索的因子分析、重回帰分析を行なった。また分析結果をもとに聞き取り調査を実施し、結果の定性的な分析を行なった。

3. 結果

重回帰分析から以下の2点の結果が得られた。第一に教員同士の協力が、学校管理職のICT活用に対する態度に最も影響を与える要因であることがわかった。教員同士が協力し、経験を共有する環境であることが、学校管理職のICT導入に対する積極的な態度の構築に影響を与える。第二に、ICTの設備環境が学校管理職のICT活用に対する態度に影響を与える要因であることが明らかになった。ICTを利用するための設備が整っていることが、学校管理職の態度の構築に影響を与える。また、学校管理職の年齢、学校の所在地、ICT専門家の有無などの要因は学校管理職の態度に影響を与えないことも明らかとなった。これらの結果は、モンゴルにおける教育政策立案に対し、有用な情報として提供された。

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ICTの教育利用と教員の自己効力感に関する研究 (2014、山本祐規子)

1. 研究背景/目的

モンゴルでは、2000年に採択されたICT-Vision 2010によってICT導入計画が明示され、特に、教育分野はICT導入を重点的に行なう分野として明記された。こうした政府の方針に沿って、モンゴルの教育現場ではICTの活用が、教育の質を高め、教員の能力開発を継続的に行なうための重要な方法として注目を集めている。途上国におけるICT活用へ影響を与える要因として、設備へのアクセス、ハードウェア、ソフトウェア、ICTを活用するためのスキルなどの外的要因に着目した研究が行われてきた。それに対し、本研究は内的要因、特に教員の自己効力感に着目して行なった。自己効力感とは与えられた責務を実行することにおける、自分の能力への自信と説明され、責務に対する計画性と楽観性が影響するとされる。本研究はモンゴルの小学校教員の自己効力感に影響を与える要因に着目し、認知心理学の枠組みから教員の自己効力感とICTの活用との関係を分析することを目的とする。

2. 研究手法

本研究では2012年から2017年にかけて実施された教員研修プロジェクト「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上‐地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」のベースライン調査のデータを活用した。838名の小学校教員が調査に参加した。ペアワイズ相関分析を用い、3項目から成る教員の自己効力感(自信、能力、満足感)と2項目からなるICTの活用(教員研修、学校でのICTの実践)の間の関係性を分析した。分析結果をもとに教員に対する聞き取り調査を実施し、定性的な分析を実施した。

3. 結果

研究からは主に二点の結果が得られた。第一に、教員研修の受講と、学校レベルの教員研修の効果に対する認識に強い相関があることが明らかになった。第二に、ICTの教育への利用に対する好意的な態度を持つことが、教員の自己効力感にとって重要であることが明らかになった。この結果をふまえ、教員の自己効力感を高める要因を以下の二点にまとめる。第一に、学校レベル、特にICTの利用に着目した教員研修を優先的に行なうこと。第二に管理職レベルへの研修で教授法の観点からICTを活用する価値の理解を深めることが重要である。定量分析からは教員が授業の準備にかける時間は教員の自己効力感に影響を与えないという結果が得られたのに対し、フォーカスグループディスカッションからは授業への準備は自信を持って授業に取り組む上で重要であるという結果が得られた。時間による授業の準備の評価が適切であるかなど、結果にみられた相違点に対してさらなる研究が必要である。

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子ども中心の教育のためのICT利用についての教員の認識に影響与える要因(2014-2016, Shengru Li)

1.  研究背景/目的

子ども中心の教育の観点において、ICT利用に対する教員の認識は授業の計画と実践において重要な要素として考えられる。近年、モンゴルでは教育政策により子ども中心の教育の実践が進められている。具体的には、2003年に施行された新教育法によって学校のカリキュラムにおいて、子ども中心の教育の導入が進められた。さらに、モンゴル国教育計画(2006-2015)に教育におけるICTの活用が明記された。モンゴル国教育計画はICTの教育計画への利用を進めるため、教員研修の重要性を強調している。こうした背景を踏まえ、本研究は子ども中心の教育の観点において、ICT利用に対する教員の認識に影響を与える要因を明らかにすることを目的に行なった。

2. 研究手法

本研究では2012年から2017年にかけて実施された教員研修プロジェクト「モンゴルにおける地方小学校教員の質の向上‐地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」のベースライン調査のデータを活用した。調査はモンゴルの地域ごとの多様性を考慮し、地方4県とウランバートル市一地区の計5地域から、合計838名の小学校教員を対象に行なわれた。研究目的に対して2つの従属変数、子ども中心の教育のためのICT利用に対する認識、子ども中心の教育のためのデジタルコンテンツ利用に対する認識、を設定した。質問票調査で得られた30項目の変数を因子分析により、7つの主成分因子に整理した。これらの要因は教育分野の専門家の助言のもと、1)教員としての能力、2)ICT導入のための学校からの支援、3)学校のコンピューターの質、4)教員同士の協力、5)ICT利用による効果、6)ICTの教育利用のための時間、7)変化に対する抵抗と名称をつけた。これらの要因を独立変数とし、重回帰分析を行ない、子ども中心の教育へのICT利用に対する認識に与える影響を分析した。

3. 結果

研究からは三点の結果が得られた。第一に、教員としての能力が、子ども中心の教育のためのICT利用とデジタルコンテンツ利用に対して影響を与える要因であることが明らかになった。第二に、教員のICT利用の効果への認識が子ども中心の教育のためのICT利用、デジタルコンテンツ利用に対して影響を与える要因であることが明らかになった。第三に教員同士の協力が子ども中心の教育のためのICT利用に影響を与える要因であることが明らかになった。これらの結果は、 ICTを活用した教育を推進するための教員研修の設計に対する示唆を与え、子ども中心の教育のためのICT利用に対する教員の認識を高めることに貢献する。

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教員のICT活用を促す要因(2013-2015, Oyun Tsoghaikhan)

1.  研究背景/目的

1990年代前半よりモンゴルは教育分野における地方分権化と民主化を進めてきた。さらに近年では、ICTインフラの整備を国家成長戦略として進めている。モンゴル政府は複数の教育政策を通して、教員のICT利用の重要性を強調しており、モンゴルの小学校、中学校教員はICTの教育利用についての知識と技術を持つことが求められるが、教員のICT導入に影響を与える要因に関する研究は多くは行なわれていない。こうした背景を踏まえ、本研究は1)モンゴルの文脈における教員のICT利用を評価する指標を開発すること、次に2)教員のICT利用に影響を与える要因を明らかにすることを目的に行なった。

2. 研究手法

教員のICT利用に影響を与える要因を調査する、教員のICT活用指導力の基準(NETS・T)を、モンゴルの教育専門家の指導のもと、モンゴルの教育基準に沿うよう修正をして用いた。このNETS・Tをもとに質問を作成し、モンゴルの571名の小学校教員を対象にした調査を実施した。得られたデータに対し、因子分析を行ない、ICTの教育における利用について「コミュニケーション」と「ICTの用途」の二つの項目を特定した。因子分析の後、重回帰分析を用いてICTの教育における利用に影響をあたえる要因を調べた。

3. 結果

研究結果からは、モンゴルの小学校において教員のICTの教育への利用に影響を与える9要素を特定した。 学校レベルの要因として、学校の所在地、学校でのインターネットのアクセス、学校からのサポートが重要な要因であることが示された。これらの要因の中で、学校からの支援は、「コミュニケーション」と「ICTの用途」の両方の項目において重要な要因であった。教員レベルの要因としてはICTに対する好意的な認識、教員研修の受講、コンピュータ利用の頻度、家庭でのインターネットへのアクセス、年齢、役職がモンゴルの教育へのICT利用に影響を与えることが分かった。これらの研究結果は、地方政府および学校管理職に対し、ICTの効果的な教育利用と教員研修の実施に対して重要なメッセージを示唆した。

関連資料

ICTを活用した子ども中心の教育(2011-2014、矢野昌太郎)

1.  研究背景/目的

1990年代前半にモンゴルは計画経済から市場経済へと移行した。それに伴い行政の民主化と地方分権化がすすめられた一方で、教育行政は、予算の減少、識字率の低下、地方教員の都市への移住、インフラの不足などの問題に直面した。こうした背景の中で、モンゴル政府は複数の政策により教育改革を行なった。2005年には新教育法が施行され、教員が中心の教育から、子ども中心の教育への移行がすすめられた。また2012年には、教育法が改正され、教育の質の向上のためのICT活用を推奨する事が明記された。こうした教育改革の中で、モンゴルにおける子ども中心の教育について共通の定義は定められてこなかった。そこで本研究は1)モンゴルの文脈における子ども中心の教育において重要な要素を特定し、2)モンゴルの小学校において、ICTが子ども中心の教育に与える影響を明らかにすることを目的に行なった。

2. 研究手法

この研究は3つの部分から構成される。第一に、モンゴルの文脈における「子ども中心の教育」の意味を定義する。アンケート調査とインタビュー調査をもとに子ども中心の教育において重要な要因を特定する。またJICA専門家により子ども中心の教育の歴史的背景を整理する。これらをもとに4名のモンゴル国立教育大学の教授がモンゴルにおける子ども中心の教育の定義を確認し、その実践と課題を明確にした。さらに、聞き取り調査の結果からは子ども中心の教育に影響をあたえ得る要因が抽出された。第二に、子ども中心の教育のためのICT利用についての分析が行なわれた。コンピュータ、LCDプロジェクター、デジタルカメラ、ビデオプレーヤー、オーディオプレーヤー、テレビ、ラジオ、パワーポイント、ワード、エクセル、スクラッチ、ムービーメーカーなど多様なICTの利用状況とその効果、利用する上での課題について、質問表調査、インタビュー調査を実施した。第三に、本研究では小学校の授業を視察し、教員の子ども中心の教育の実践とスクラッチプログラムの利用状況について、29名のバヤンホンゴルの教員と20名のウランバートル市の教員を対象した評価シートを用いた調査を行なった。

3. 結果

教育活動における子ども中心の教育についての分析からは、主に3点の結果が得られた。第一にモンゴルにおける子ども中心の教育は、児童の関心を高める授業を通して、子どもの創造性、自習の能力、問題解決能力を育むことのできる教育であると定義された。第二に、教員は、子ども中心の実現に関して、ICTを用いて教材のビジュアル化(パワーポイント、ムービーメーカー、スクラッチ)をすることが児童の関心を高めることにつながると考えていることがわかった。第三に、教員は、スクラッチを用いて教材を作成することで、現地の教材を活かした教育を効果的に行なうことができ、児童の興味を引き出していることが明確になった。研究を通して、教員がICTを教育への利用に対して好意的な態度を示し、ICTを活用する事により子ども中心の教育を進めることが可能であると明示された。ICTの活用はモンゴル小学校教育さらなる発展に貢献すると考えられる。

関連資料

One-to-One ラーニング(2011-2013, John Auxillos)

1.  研究背景/目的

コンピュータを基本的な学習ツールとみなし、子どもが各自一台のコンピュータを活用して学習を行なうone-to-one ラーニングへの関心が世界中で広がっている。Nicholas Negroponteによって創設された非営利団体、The One Laptop per Child (OLPC)は、教育機会の限られる子ども達に、構成主義に基づいた質の高い基礎教育を提供することを目的とし、低価格で耐久性の高いノート型パソコン(XO1)のデザイン、製造をし、各国政府に対する販売を行なっている。2012年までに、36カ国で合計200万台のXO1ラップトップが提供された。モンゴルにおいては、2008年からOPLCイニシアチブが50校を対象に試験的に始まり、これまでに1200台のXO1が提供された。こうした背景をふまえ、本研究室ではコンピュータの活用が子どもの学習成果に与える影響を理解するため、現地の教員、学校管理職、教育専門家の経験をもとにその成果と課題ついて研究を実施した。

2. 研究手法

本研究は2012年に、XO1コンピュータを導入した7校(OLPC群)、導入していない7校(非OLPC群)、計14校の小学校五年生の児童を対象に実施した。小学校は4つの県とウランバートル市の2地区から選出された。14校合計2,000人以上の5年生児童を対象に2008年に小学校学力試験の算数と読解力のテストを実施した。学力試験に加え、児童の属性データ、ICTに関連する項目、コンピュータの利用への態度に関しての質問票調査も実施した。上記の試験と質問票調査を用いた擬似実験手法により、OLPC群と非OLPC群の、2008年と2012年での算数と読解力の能力を比較した。また初期条件における学力の差を考慮するため、2008年の小学校学力試験の算数と読解力の成績を用いてt検定を行なった。

3. 結果

研究からは6点の主要な結果が得られた。第一に、OLPC群と非OLPC群の間で、2008年の算数の成績に統計的に優位な差が見られる一方で、読解の成績には優位な差は見られなかった。第二に、算数と読解の成績ともに、2008年から2012年にかけて顕著な向上が見られた。特にOLPC群は非OLPC群と比較して読解力の成績の向上が顕著であった。第三に、2012年の読解力の成績についてOLPC群と非OLPC群の間で優位な差が見られた。OLPC群の2012年の読解力の成績は2008年から3.72ポイントの上昇が見られた。第四に、初期条件における成績を考慮した場合、2012年の算数の成績について、OLPC群と非OLPC群に優位な差は見られなかった。第5に、OLPC群の読解力スコアは非OLPC群よりも3.75ポイント高かった。この結果はコンピュータを活用することにより読解力の成績が17%向上したことを示している。第六に、多変量回帰分析からXO1コンピュータを活用することによる読解力の向上は、性別、算数の成績、TVの視聴に費やす時間、宿題に費やす時間、労働に費やす時間の影響を受けることがわかった。結論として、本研究はXO1コンピュータを活用することにより児童の学習達成度の向上を促すこと、特に、コンピュータの活用により児童の読解力が向上することを明らかにした。

関連資料
研究論文
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